生活保護は、憲法で保障された「健康で文化的な最低限度の生活」を支える最後のセーフティネットです。私たちが病気や失業などで生活に行き詰まったとき、家族の扶養や年金・手当などあらゆる資源を使っても足りない部分を国が補ってくれます。
具体的には、厚生労働省が定める地域・年齢・世帯構成ごとの「最低生活費」から、年金やパート収入などの収入を差し引いた差額が毎月支給されます。たとえば、預貯金などを使い果たしても収入が最低生活費を下回る場合、その差額分がお金としてもらえます。
申請のしかたと調査内容
住んでいる市区町村の福祉事務所(または社会福祉協議会)が窓口です。申請時には本人や世帯の預貯金・不動産などの資産、親族からの援助がないかなどが調べられます。不動産(居住用の持ち家)や通勤の車、自営業の店舗など、生活に必要な最低限のものは、場合によっては手放さなくても受給できることがあります。
給付のしくみと義務
受給が決まると、国が定めた最低生活費から収入を差し引いた金額が、毎月支給されます。受給中は毎月の収入申告が必要ですが、たとえば体調に合わせてパートで働くなど働く意思のある人には就労支援(職業訓練や求人紹介など)も受けられます。
また、福祉事務所のケースワーカーが年に数回程度、自宅を訪問して生活状況を確認します。行政側と一定のやりとりはありますが、不当に生活を切り詰められるわけではなく、あくまで最低限度の生活を下回らないよう見守られています。
障害者のための就労移行支援事業所 LITALICOワークス
支給内容と関連制度とのつながり
生活扶助(食費・光熱費など)のほか、住宅扶助・教育扶助・医療扶助・介護扶助・出産扶助・生業扶助・葬祭扶助など8つの項目があります。これらによって、食事・衣服・住まい・医療・介護など生活に必要な費用を幅広くカバーします。
たとえば高齢者には年金や介護保険制度、障害者には障害年金や手帳などの給付がありますが、それらで生活が足りない場合、生活保護が最後に支えます。地域包括ケアシステムでは地域で高齢者や障害者を支えますが、万が一家族や公的制度で足りない場合は、生活保護が補い「生活に困った人を見捨てない」体制となっています。
2013~2015年の生活保護費引き下げと裁判の経緯
2013年から2015年にかけて、当時の政権は生活扶助の基準を段階的に大幅に引き下げました。これは「生活保護費1割カット」を目標にした措置で、全国平均で生活扶助額を約6.5%(最大10%)減らすものでした。
この引き下げに対し、2014年以降、全国29都道府県で約950人超の受給者が「健康で文化的な最低限度の生活」を否定されたとして、引き下げ処分の取消し等を求める集団訴訟を起こしました(いわゆる「いのちのとりで裁判」)。
最高裁判決(2025年6月27日)の内容
最高裁第三小法廷は、国による2013~2015年の生活保護基準引き下げを違法と認定し、自治体が行った減額決定処分を取り消す判決を言い渡しました。
「健康で文化的な最低限度の生活」を守るために必要な基準額を、合理的な検討を経ずに下げたことは裁量の逸脱にあたると判断されました。
つまり、政府が十分な根拠なしに基準を下げたことは法律違反であると認定されたのです。判決は全国の受給者にとって大きな希望となる内容です。
判決が私たちの暮らしに与える影響
この最高裁判決は、生活保護受給者にとって大きな安心材料になります。今後の生活保護の水準は守られることが期待でき、将来また急に引き下げられる心配は減りました。
私自身も生活保護にお世話になっているひとりです。この判決を知って、少しほっとした気持ちになりました。同じように不安を抱えている方にとっても、心強いニュースだと感じています。
生活保護は「最後のセーフティネット」
生活保護は社会保障の「最後のセーフティネット(安全網)」です。年齢・国籍・家族構成にかかわらず、だれでも収入が最低生活費を下回れば利用できます。
厚生労働省も「生活保護の申請は国民の権利」と明言しています。住まいや車を持っていても、生活に必要と判断されれば支給されるケースもあります。
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困ったときの相談先
お住まいの市区町村の福祉事務所(または福祉課、福祉センター)がまずは相談窓口です。また、社会福祉協議会(社協)、地域包括支援センター、弁護士会の無料相談窓口などもあります。
一人で悩まず、まずは相談してみてください。「誰かに話すこと」で道がひらけることもあります。
参考資料:厚生労働省、各種報道記事、弁護士会資料、最高裁判決文などをもとに構成しています。